塩尻から全国へ。”めぐり”続ける「人と地域の循環」を空想する。

『1つの会社や居場所だけに縛られない関わりが中からも外からも生まれる仕組みを、塩尻に創り出したい』。そんな未来を空想し、実行に移しているのが、横山暁一さんです。

人材サービスの大手企業に勤めながら、兼業で塩尻市の地域おこし協力隊としても活動し、NPO法人の立ち上げなど、ご自身も多様な関わり方を実践していらっしゃいます。

もともと縁はなかったという塩尻の地で、個人と組織の双方が輝き、地域に循環する場を育もうとしている横山さんに、移住までの経緯や描いている空想について伺いました。

【プロフィール】
横山暁一(よこやまあきひと)さん

1991年静岡県沼津市生まれ。名古屋大学教育学部卒。「人の自律的発達」に関わりたいという想いで、大学時代は重度心身障がいの方の自立支援活動に参画。卒業後は教員になることを目指していたが、人生における重要なファクターである「はたらく」という側面から人の成長に携わりたいと思い、パーソルキャリア株式会社(当時:株式会社インテリジェンス)へ入社。リクルーティングコンサルタントとしての法人企業の採用に携わる。結婚を機に地方移住を考え、2019年4月からパーソルキャリアに時短勤務で所属したまま、長野県塩尻市の地域おこし協力隊に着任。塩尻商工会議所で地域企業のPRや人材獲得、経営支援に携わる。現在は官・民・NPOのトライセクターキャリアに挑戦中。

目次

様々な人たちが塩尻に関わりやすく

ーー横山さんの現在の働き方を教えてください。

横山さん
パーソルキャリア株式会社で法人営業をしながら、兼業で塩尻市の地域おこし協力隊として活動しています。市役所からは塩尻市に20~40代の移住定住者を増やすというミッション、商工会議所からは市内の中小企業における人材不足の解決というミッションを与えられています。私は、双方の課題を解決するために、移住者と中小企業の雇用のマッチングを促進しています。

ーー移住と仕事の関係は切っても切り離せないですよね。

横山さん
長野県というと安曇野や松本のイメージが強く、いきなり「塩尻に移住したい!」ということも少ないですし、働き先になるような市内の中小企業さんも正社員の求人に力を入れることはハードルが高いのが実態です。そこで今は、”副業”という形で塩尻に関わる人を増やす活動に力を入れています。

横山さんと塩尻のみなさん

移住まではいかないけど、少し手前の関係人口という入り口で様々な人たちが塩尻に関わりやすく、そして、地域の企業としても優秀で専門性のある人たちが携わってくれるようなwin-winの形を目指して取り組みを進めています。これまでも、市の企画政策部地方創生推進課とパーソルキャリアが提供するする「iXハイクラス副業」を連携させて、塩尻市の地域課題解決に取り組んでいただく特任CxOを副業限定で募集しました。
(https://ix-careercompass.jp/special/highclass-fukugyou/shiojiri/)

その他にも、塩尻市の伝統工芸品である木曽漆器を広める「オンライン漆器祭」(https://shikki-online.studio.site/)など、地域活性化につながる活動についてもお手伝いしています。本来の人材活用といった文脈を超えた様々なお仕事をさせていただいています。

日本の地域課題解決の最前線

ーー横山さんご自身も副業という形で地域おこし協力隊ということですがどのようなキッカケで塩尻に来たのでしょう?

横山さん
私は静岡県沼津市の出身で大学と就職先も名古屋でしたので、塩尻に訪れたこともなかったのですが、会社で地域課題解決の研修として鳥取県智頭町に半年間関わった際に、名古屋での家と会社のほぼ往復だった生活のスタイルから”地域”というコミュニティに触れて感化された経験がありました。

その頃から地域にも関わりながら暮らしや仕事を楽しめるような生活をなんとなく意識するようになったのですが、結婚を考えるようになってから妻が「いつか長野に帰りたいな〜」とチラホラ口にしているのも聞いていて、名古屋での長野のコミュニティにちょくちょく顔を出していたんですよね。そこでたまたま出会った方とのつながりで塩尻を知り、求人を見つけてすぐに応募しました。

コワーキング・アクセラレーター・リビングラボの機能を兼ねた シビック・イノベーション拠点 スナバ

今、私が居る「シビック・イノベーション拠点 スナバ」(https://www.sunaba.org/)のオープニングスタッフの募集だったのですが、地域課題を行政だけではなく、ビジネスの力を活用して解決するという視点に感銘を受けて、結婚式の前日にも関わらずそのまま応募のボタンを押してしまいました

ーーなるほど。実際に塩尻に足を踏み入れていかがでしたか?

横山さん
訪れてみると想像以上に全国から多くの人が塩尻に集まっていて、これからの日本の地域課題解決の最前線になるだろうなと感じましたね。

ーーそこから兼業で地域おこし協力隊に入られたのですね。

横山さん
一度は採用の選考から落ちたんですよ。でも、向こうから地域おこし協力隊のポジションを新規でつくってくれて。ただ勤めている会社も好きだったので、兼業という形で関わる選択をしました。

今は塩尻の仕事にとてもやりがいを感じています。大企業にいると、「自分で一から何かを生み出す」という経験はしずらいと思うのですが、地域ではプレーヤーがいません。逆に地域では自分が言い出しっぺになって、事を起こしやすい。そのための仲間も塩尻にはいます。  また、家族も塩尻に住んでいて、生活の拠点も塩尻ですし、子育てが自然あふれる環境で出来るのは、まさに自分たちが目指していた姿でした。

人と地域の成長が循環する地域へ

ーーそんな横山さんの空想をお伺いしたいのですが、実現したい未来などありますか?

横山さん
「塩尻の人事部」というテーマでNPO法人MEGURUを設立(https://meguru-shiojiri.studio.site/)したのですが、名前にも現れているように雇用の流動化を推し進めていきたいです。

NPO法人MEGURU 「塩尻の人事部構想」イラスト

個人としても自分らしいキャリア形成が求められる時代だと感じますし、企業や組織としても働き手となる人材の柔軟な活用方法はさらに意識していかなければならないと思っているのですが、塩尻をはじめ地方ではなかなか難しいのも現状です。

ただ、地域の課題によっては「それって大学生のインターンを募集したらいいんじゃない?」とか「それって時短勤務や副業で関わってもらってもいいかも」など、様々な解決策が考えられるので、そこでマッチングが生まれるように企業や自治体と連携して土壌をつくっていくのが私たちのMEGURUの仕事だと思っています。 

塩尻市の人材事業の実働部隊=人事部として、どんどん活動していき、個人の「こんなことやってみたい」だとか「こんな働き方をしてみたい」といった、想いやスキルが地域内でどんどん循環して、1つの会社や居場所だけに縛られない関わりが中からも外からも生まれる仕組みが根付いていく。そして塩尻から全国へ地域課題解決の輪がめぐっていく未来を空想しています。

ーー空想ポストを通して、横山さんの活動や塩尻市に興味を持つ方もいらっしゃると思うのですが、何か関わることができるのでしょうか?

横山さん
MEGURUには、地域の企業の人事部の方や経営者の方々にも入っていただき、これからの柔軟な人材活用を推し進めています。塩尻での多様な人材の活用や新たな働き方の創出といった領域に興味のある塩尻市内の方はぜひMEGURUで活躍していただきたいなと思います。MEGURUの活動を応援してくださる方は、個人や団体で賛助会員なども募集しています。

市外を拠点にされている方々でいうと、「塩尻という場所から全国につながる地域課題解決を」というテーマで活動しておりますので、副業やプロボノという形で参加していただけれたらと思います。塩尻での取り組みをご自身の活動されている地域に持ち帰りたい!といった方々にも、関わりしろを生み出せたら嬉しいです。ぜひ塩尻に遊びに来てください。

取材を終えて
「地域課題解決の最前線に」と語る横山さん。取材中の言葉や表情からは、普段一緒に活動するメンバーのみなさんの想いも横山さんを通して伝わってくるようでした。そんな横山さんの空想が湧き出る時間は、1歳のお子さんを夜な夜な抱っこしているときだとのこと。アイデアの3Bの法則(Bus、Bed、Bath)にBabyで4Bです、とお話しされた時の笑顔も素敵でした。塩尻での取り組みが全国にも広まっていき、人や空想が気持ちよく”めぐっていく”様子を応援していきたいです。

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この記事を書いた人

愛知県豊橋市出身。内装デザイン/コミュニティデザインを学び、2020年春より岩手県釜石市へ移住。音楽とみうらじゅんをこよなく愛し、訪れた街の看板撮影を趣味とする。

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